親戚の家に泊まった朝、誰よりも早く目が覚めてしまい、お布団をかぶって誰か起きるまで待っていた、という経験はありませんか?
こういう先の読めない時間を過ごすのは、短くても結構辛いものです。
しかし、病気や怪我でひとりで起き上がることができない時は、毎日家族が起きるのを待つしかありません。
そんな時、器具を使ってひとりで立つことができれば、日々を気兼ねなく過ごすことができますね。
もし今、お布団からの立ち上がりにお困りで、辛い時間を過ごしている方がおいでなら、これからご説明する専用の補助器具がお役に立てるかもしれません。
お布団から立ち上がるための補助器具とは?
人間が横になった状態から立つためには、まず上体を起こして座り、次に膝を立てて立ち上がる必要があります。
ですから、それを補助してくれる立ち上がり器具には、
①お布団の下に敷いて、上半身を起こすのを助けてくれるもの
②お布団の横に置いて、立ち上がるのを支えてくれるもの
の2種類が求められます。
①は、介護ベッドの簡易版と考えると分かりやすいでしょう。
電気や空気圧を使って、お布団ごと上体を起こすためのものなので、1人で起き上がって座れる方には必要ありません。
ひどい腰痛などで、横を向いて手をついたり、何かをつかんだりしても身体を起こせない方に向いています。
しかし、あくまで上体を起こすための補助器具なので、実際に立ち上がるためには②が必要です。
②は、実際に立ち上がる時、身体を支えるためのバーです。
お布団の横に置き、座った上体になったら、このバーをつかんで立ち上がります。
寝返りを打てる方なら、このバーをつかんで、寝ている状態から身体を起こすこともできるでしょう。
設置式の立ち上がり用バーなら重量がありますので、バーに紐をかけ、それをたぐり寄せて身体を起こすという方法も可能です。
立ち上がり補助器具を借りる場合、買う場合
お布団から上体を起こす器具と、立ち上がりを補助する器具は、どちらも介護保険でレンタルできます。
しかし、実際にレンタルできるかどうかは身体の状況次第なので、使ってみようと思った時は、まず介護士さんに相談してみましょう。
レンタルできなかった場合は購入ですが、介護保険は効きませんので、実費となります。
また、ネット販売もされていますので、あれこれ比べてみるといいでしょう。
ネット購入の場合も実費になります。
バーの立ち上がり補助器具は、どれもそっくりといっていい程よく似ています。
しかし、一見同じものに見えても、少しずつ用途が違いますので、選ぶときは用途をよく確認しましょう。
ネットで買う場合でも、できれば介護士さんか、医療関係者に1度相談することをお勧めします。
お布団ごと上体を起こす補助器具
上体を起こすのを手伝ってくれる器具は、お布団の下に入れて使います。
お布団の半分の大きさで、電動式です。
手元で操作でき、座位に近い角度まで起こしてくれますので、そこから立ち上がり動作に移ることができます。
場所を取るベッドに比べ、移動が簡単で、コンパクトにたたんで収納できるのが強みです。
お値段は高めですが、介護保険でレンタルできる可能性が高いので、1度相談してみるといいでしょう。
ここでは2種類ご紹介します。
○東郷製作所「おきらく」
車の精密部品を作っている会社が、得意の金属加工技術を使って作った補助器具です。
ビーチベッドのような背もたれを上下することによって、身体を起こします。
重さは約14kg、参考価格は100,000円です。
○モルテン「アディス」
ボールや自動車部品、さらには医療・福祉関係のあらゆるゴム製品を手がけている会社が作った補助器具です。
空気圧で身体を起こす方式で、上半身だけでなく膝部分も上げて、身体が滑り落ちるのをを防止します。
重さは約12.5kg、参考価格は138,000円です。
移動式の立ち上がり補助器具
軽くて持ち運びしやすく、どこででも使えるタイプの立ち上がり補助器具です。
固定するものではないので、横や斜めからの力には弱いです。
ですから、倒れたり滑ったりしないよう、ある程度腕の力が必要です。
しかし、真上から垂直に力をかけて立つことができる方であれば全く問題ありません。
比較的お値段が安いので、お布団の横以外にも、居間や玄関など場所ごとに2つ3つと準備している方も多いようです。
種類が多いので、ここでは3種類ご紹介します。
○山善「KRT-80」高さ81cm
アルミ製で重さは1.5kg、組み立て式です。
ネットでは、「立ち上がり取手」「立ち上がり手すり」という名前で、6,000円前後の価格帯で売られています。
○山善「TF47-162」高さ80cm
「KRT-80」と同じ形ですが、籐製で、重さが2kgと少し重めです。
素材が籐なので、アルミのようにお部屋の雰囲気を壊すことがありませんし、触ってひんやりすることもありません。
お値段は、「KRT-80」よりほんの少し高めになります。
○楽々軒「立ち上がり手すり」2段高さ60cm、3段高さ80cm
山善シリーズよりさらにお手頃なお値段で買えるのが、楽々軒の「立ち上がり手すり」です。
アルミ製で組み立て式となります。
参考となるお値段は、ネットで2段が1.3kgで約3,000円、3段が1.8kgで約4,000円です。
設置式の立ち上がり補助器具
設置式は、介護目的で作られた本格的な立ち上がり補助器具です。
スチール製でそれ自体が重く、上に乗って使えば、どの方向に力をかけても倒れることはありません。
しかし、やはり固定式ではないので、移動式ほどではないにしろ、横からの力には注意が必要です。
また、バーを支える足元の板は、数ミリとはいえ厚みがあるので、高齢の方が使う場合はつまずきの原因になることもありますので、気をつけたいところです。
ここでは、2種類ご紹介します。
〇武井工業所「立つ之助:元気&元気2」高さ43cm
金属加工が得意な武井工業所の介護用手すり「立つ之助」シリーズです。
下に持ち手がある「元気」は16,000円程度、バーだけの「元気2」は12,000円程度が参考の価格になります。
どちらも重さは6kgです。
紐をかけて、それにつかまって起きても大丈夫な位の強度と安定性を持ちます。
○矢崎化工(株)「たちあっぷ:CKA-02」高さ80cm
イレクターという、一見プラスチックに見える鉄パイプで様々な介護用品を展開している矢崎化工の、「たちあっぷ」シリーズの1つです。
種類の多い「たちあっぷ」の中でも、「CKA-02」はお布団からの立ち上がりを得意としています。
お布団の下に敷き込む部分も多く、重量もあるので圧倒的な安定感を誇ります。
参考価格は、税込みで70,000円近くしますが、ネットでの販売では50,000円前後で出ていることもあります。
レンタルもできますし、オーダーメイドも可能ですので、1度介護士さんに相談してみましょう。
補助があってもお布団からなかなか立てない時は
色々見てきましたが、立ち上がり器具をそろえてもなかなか立てないことがあります。
そんな時、忘れてはいけないのは、このバーがあくまで補助するためにあるのであって、何かしてくれるわけではないということです。
お布団から自力で立ち上がるには、筋力と柔軟性が不可欠です。
最初に寝返りを打って横を向き、腕を使って身体を支え続けなければなりません。
比較的体力のある方なら、すぐに使いこなすことができるでしょう。
しかし、筋力が弱っている方の場合は、なかなか立てないことがあります。
例えば、やったことのない動きをしなければならないので、体重移動がうまくいかないかもしれません。
バーを握るのに十分な力が付くまで、多少筋トレが必要なこともあるでしょう。
バー単体だけでなく、オプションの増設が必要になるかもしれません。
足りない部分は、使う側が補うしかないのです。
もともと、人の介助があって立ち上がれる方なら、立ち上がり補助器具を使ってひとりで立てる可能性は高いのです。
ですからすぐに諦めたりせず、自転車に乗る練習をしているような、楽しい気分で試行錯誤を繰り返してみてください。
補助器具を自在に使おう!
家族が起きるのを待つ時間は辛いものですが、トイレに家族を起こすのはそれ以上に心苦しいものです。
「自分で立ち上がることさえできればなぁ」とふさいだ気分になりがちです。
しかし、そんな毎日の心の負担を、補助器具で減らすことができるのであれば、こんな素晴らしいことはありません。
今は、補助器具の種類も豊富ですし、詳しい専門家もたくさんいます。
どんどんアドバイスをもらって、どんどん使っていきたいものですね。