「睡眠負債」という言葉をご存じでしょうか?
睡眠負債とは、わずかな睡眠不足が積み重なり、債務超過にまで陥る危険性がある状態、または、すでに債務超過に陥っている状態のことを言います。
心身の健康の源である睡眠の負債は、現代病である鬱病やガン、認知症の発症にも影響を与えると言われています。
そこで、今回は睡眠負債の予防や対策についてまとめてみました。
対策が必要な日本の深刻な睡眠負債の現状
私たち日本人は、人口の半数近くの人が、睡眠時間が足りていない、と自覚していると言われています。
世界中でも睡眠時間が少ない国民なのです。
日本人の成人の平均睡眠時間は、6時間を切っているという統計も出ています。
また、ある情報では、2003年にペンシルベニア大学が行った研究で、6時間睡眠を2週間続けた被験者グループの脳の働きが、2晩徹夜したグループと同程度まで低下しているとの結果が出たそうです。
必要な睡眠時間には個人差があるものですが、睡眠不足や睡眠負債が与える影響は少なくないと言わざるを得ません。
睡眠負債になると注意力が散漫になり、うっかりミスが増え、仕事の効率が落ちます。
そして、怪我や事故を誘発する可能性も高くなってしまいます。
その他には、、冒頭でもお話しした通り、うつ病やガンなどの成人病、そして深刻な認知症の発症に関係しているとも言われています。
一刻も早くその対策を考えたいものです。
睡眠負債対策のための生活改善
睡眠負債を解消するためには、睡眠時間を増やすことが当然ながら必要です。
そうは言っても、日々の仕事や家庭のことに追われて睡眠時間が短くなるからこそ、睡眠負債に陥るのです。
睡眠時間を長くしようと思って、簡単に長くできる人は多くはないものです。
とは言え、あきらめる必要はありません。
ほんのわずかでも対策を講じていくことで、債務超過を免れることは可能なのです。
睡眠時間を気にする前に、まずは睡眠の質を上げることを考えましょう。
睡眠の質を上げるためにできることとして、昨今よく言われている「ブルーライト」を睡眠前に浴びないようにしたいものです。
ブルーライトとは、可視光線の中で最も紫外線に近くて、波長が短い強いエネルギーを持っています。
紫外線と似た波長を持っているので夜に浴びると、脳が朝だと勘違いしてメラトニンという睡眠ホルモンに変調をきたしてしまいます。
寝る前にスマホやパソコンを使うと、体内時計の乱れ、寝付きに影響が出てしまうということが、問題になっています。
仕事などでどうしてもパソコンやスマホが手放せない、という人は、ブルーライトを軽減してくれるメガネの使用をおすすめします。
そして、眠りにつく前の3時間から4時間は、眠っている間に臓器を休ませるために、何も食べないようにすることも上質な睡眠のためには必要です。
眠る前に飲食をすると、眠っている間も脳や消化器官をはじめとする臓器は働き続けなければいけないからです。
この2つの生活改善を行うことで、かなり睡眠の質の向上が見込まれるでしょう。
自分自身からのメッセージをキャッチ!睡眠負債対策
睡眠負債というのは、普通の睡眠不足とは少し違った一面があります。
普通の睡眠不足の場合は、自分で「今日は睡眠不足で調子が出ないな」と意識することができますが、睡眠負債の場合は違います。
少しずつ少しずつ積み重なった睡眠不足の影響は、目に見えない、感じないレベルで私たちの心身にダメージを与えていくのです。
正確には、その時々で感じとることは可能なのですが、微細なことなので睡眠負債だとは気づかないことがほとんどです。
たとえば、鬱状態になる前に、仕事上では凡ミスが増える、頭がボーっとすることが増える、なんとなく気分が冴えなくて外出する気がしないなど、自分自身からサインが送られてきてはいるかもしれません。
このようなサインをキャッチしたとき、睡眠負債の返済ができれば、本格的な鬱状態へと移行することを予防できるかもしれないのです。
また、ガンを発症した人に、ガンになる前の心身の状態を問うと、ほとんどの人が強いストレスを感じているそうです。
ストレスに対抗するためには良質な睡眠をとることが、とても有効になってきます。
そこで、深刻な成人病になってしまう前に、睡眠負債対策を講じたいものです。
体内リズムや睡眠リズムを壊す寝だめ
睡眠負債対策として、休日に寝だめをする人も中にはいます。
寝だめは何も効果がないというわけではありませんが、睡眠負債の返済という面から言えば、あまり効果がないと言わざるをえません。
寝だめをした後は、確かに直近の睡眠不足は解消され、体の疲れもとれます。
心身の疲れがたまっているからこそ、寝だめをしたくなり、できてしまうということが言えます。
とは言え、寝だめをおすすめしない理由は、体内リズムを崩してしまうからです。
私たちの体は、本来は太陽とともに起き、夕日とともに眠るというリズムに適応するように作られています。
その証拠に、眠る前から徐々に体温が下がり始め、目覚める頃には一番体温が低くなります。
そして、起きてから徐々に体温が上がり始め、夕方頃に一番高くなるというリズムは、自分がそう成ろうと意識して行っていることではなくても、自律神経というものが、ちゃんと調節してくれているのです。
現代の生活では、そのリズムを反したことが多くはなっていますが、それでも、ある一定の基準よりあまりに大きくずれてしまうと、体が対応できないことが多くなります。
セロトニンが睡眠負債対策の救世主
先に、睡眠債務の対策として生活習慣を整えましょう、とお話ししましたが、もう一歩すすんで、睡眠負債解消のためにできることがあります。
まず、朝日を浴びることをおすすめします。
朝日を浴びるとセロトニンという物質を増やすことができるのです。
パソコンやスマホのブルーライトで変調をきたしたセロトニンの分泌を、朝日に補ってもらいましょう。
セロトニンは別名「幸せ物質」とも言われていて、精神を安定させる役割を担ってくれています。
ノルアドレナリンやドーパミンという他の二つの神経伝達物質の暴走を抑えて、バランスをとってくれているのです。
セロトニンが不足すると心のバランスが崩れ、鬱病の原因になるとも言われています。
また、セロトニンは、私たちの血管の凝固や収縮に影響を与えたり、消化管に多く存在するため便秘を予防してもくれます。
朝日を浴びることの大切さが、よくお分かりいただけたのではないでしょうか?
心身のバランスを整えることで、夜になると自然に眠くなり、上質な睡眠をとることができるようになるのです。
睡眠負債対策には短いお昼寝が一番!
心身のバランスを整えて上質な睡眠をとる準備をしたうえで、睡眠不足と睡眠負債対策として、睡眠をとることで解消していきましょう。
ここまでは、睡眠の質を上げることについて、ご理解いただけたと思います。
そして、睡眠の質を上げることを身に付けた次には、睡眠時間を少しでも多くとるための努力が必要です。
睡眠不足解消には無駄な夜更かしをやめること、そして短い昼寝、仮眠をとるということが有効になります。
元々、お昼寝の最適時間は30分以内と言われていますので、睡眠負債対策のお昼寝も20分程度で十分です。
かねてより大手ゼネコンの現場事務所などでは、お昼ごはんを食べた後に15分から20分のお昼寝タイムを設けているところが多くあります。
朝早くから夜遅くまでの仕事が多い現場では、短い仮眠をとることで、怪我や事故を防いでくれるということを、肌身を持って感じていたからこそ、自然に生まれた習慣のようです。
現在では、ある大手IT企業などもお昼寝タイムを設けています。
日頃、6時間以内の睡眠しかとれないという人は、週末にまとめて10時間もの寝だめをやめてみましょう。
夜の睡眠は7時間半くらいに抑えて、20分の昼寝をするほうが、睡眠負債対策になるのです。
睡眠負債対策にはお昼寝と睡眠の質を上げる努力を!
睡眠負債対策に一番効くのは、やはり、お昼寝をすることです。
週末のダラダラした寝だめをやめて、休みの日に20分程度のお昼寝をしてみましょう。
朝日を浴びてセロトニンの分泌を増やすなど、睡眠の質を上げることも同時に行い、睡眠負債の返済に努めましょう。
深刻な事態になる前に対策をとって、自分をいたわってあげてくださいね。