私たちの睡眠時間は、1日の約1/3を占めています。
つまり人生の1/3は寝ているんです!
その時間を共にするお布団ですが、その歴史は意外と知られていないのではないでしょうか。
私たちが普段使っているお布団が一般家庭で使われるようになったのは、1970年代です。
そう、そんなに昔のことではないんですよね。
ではお布団はどんな風に進化してきたのでしょう。
ここでは、お布団がどのようにして私たちの生活に関わってきたのかをご紹介していきます。
昔はお布団は各家庭で作られていた?
皆さまは普段どこでお布団を購入されますか。
デパート・ホームセンター・通販、そして少し大きめのスーパーでも買う事ができますよね。
今となってはどこでも簡単に手に入るお布団ですが、実は戦前までお布団を作るのは主婦の仕事の1つでもありました。
では、昔はどのように作られていたのでしょう。
当時は布団屋がなく、全国に多数のわた屋が存在しました。
そこで木綿わたを購入し、家族それぞれに合った柄や大きさ、そして季節に合わせたお布団を作っていました。
そんな母親のお布団作りを手伝いながら、子供たちは自然に作り方を身につけていったのです。
料理と同じで、各家庭で作り方や出来栄えが違うのでしょうね。
また、手作りお布団はサイズが変更できるので、おばあちゃんが使っていたものを子供用お布団に仕立て直し、その後座布団に…という風に、形を変えてその家族に寄り添っている寝具でもありました。
30年ほど前でもお布団を作っていた家庭はまだ多かったようですので、まだ作り方を知っている人は多いはずですね。
さらに昔はどうなってた?お布団の歴史を辿ってみよう!
昔を遡ること弥生時代。
遺跡から発見された竪穴式住居にベッドのようなものが残っており、丸太で作られたベッドで寝ていたことが推測されています。
しかし、現代のようにしっかりと組み立てられたものではなく、簡易的に作られたものでした。
そして、敷布団になっていたのは、藁なども植物を編んで作られたもので、掛け布団には襖(ふすま)と呼ばれる着物を使っていたそうです。
平安・鎌倉時代になっても、まだ今のようなお布団は存在しません。
貴族でさえ、畳の上に直接寝ていたのです。
そして、掛け布団もなく、着ていたものを掛けていました。
現在のお布団の形に近くなってきたのは江戸時代です。
しかし、畳の上にお布団を敷くのは貴族たちだけで、庶民はまだ「むしろ」を敷いて寝たり、藁などにもぐって寝ていました。
その後木綿わたのお布団が登場していますが、庶民にはまだまだ手の届かない高級品です。
そこで庶民は、天徳寺と呼ばれる和紙でできたお布団を使っていました。
中に藁を入れたものなのですが、現在のお布団のふかふか具合から考えると、使い勝手が悪そうに思えますね。
しかし、これがまた暖かく、その上丈夫で安いためかなり重宝されていたそうです。
紙の力、恐るべしでしょう。
明治時代にはお布団を使える庶民は増えてきたものの、農村部ではまだ藁で寝る習慣が残りました。
全国的に広く木綿わた入りのお布団が普及したのは、戦後と言われています。
今のようなふかふかのお布団を掛けて寝るようになるまで、かなり時間がかかったのです。
知ってた?実はお布団よりも歴史の古いベッド
前章でもお伝えしたように、弥生時代には既にベッドのようなものを使用していました。
しかし、これは形としてベッドのようなものだった、というわけです。
ベッドとして日本に入ってきたのは奈良時代(710年~)で、中国より伝わったとされています。
お布団が普及し始めたのが明治時代(1868年~)なので、1000年も早くベッドが存在したことになります。
一方エジプトでは、紀元前3200年、つまり5200年前にはベッドの原型ともいえるものがあったことが埋葬品や壁画等からわかっています。
また、かの有名なツタンカーメンのお墓からもベッドが見つかっており、金で装飾されたものや彫刻されたものも多数ありました。
昔から今にかけてお布団の形は時代によりかなり変化してきていますが、ベッドの基本的な形は、この頃からそんなに変化がないのも驚きなことです。
ベッドではなくお布団が主流になったきっかけは?
前章でお伝えしたように、お布団が登場するよりも前からベッドが使われていました。
それでは、なぜベッドではなく、お布団が主流になったのでしょう。
それは、畳に関係しています。
畳は奈良時代に登場したのですが、当時の畳はむしろを数枚重ねただけのものでした。
そして、貴族たち一部の人たちはその畳を重ね、少し高くなったところで寝ていました。
庶民はというと、むしろや藁を敷いた上で寝ていました。
敷布団の役割であるむしろを床や地面に敷いて、その上に着物を掛けて寝ていたことから、畳の上にお布団を敷く文化になったのではないでしょうか。
その後、畳が普及していき、徐々にベッドは姿を消していきました。
鎖国の廃止後、外国文化とともにベッドも再び日本に入ってきましたが、その後も一般には長らく普及せず、一部の上流階級の家庭や病院等で使われている程度でした。
戦後少しずつ国内でのベッドの生産が始まり、庶民にも手が届くようになりました。
しかし、需要はしばらく低かったそうです。
当時の日本はまだ大人数で生活している家族が多かったため、ベッドを置くスペースはなく、お布団の方が使い勝手が良かったのでしょう。
昔と同じで現代でも同じ理由でお布団を選んでいる人も多いのではないでしょうか。
羽毛布団の出現で変わった冬の夜
昔、羽毛布団が作られるまでは、木綿わた布団が主流でした。
戦国時代になると木綿の栽培が全国的に盛んになり、一気に木綿が普及したからです。
それに伴い、夜着(よぎ)という木綿わた入りの着物が誕生しました。
当初は上流階級や武士の間でしか普及されていませんでしたが、時代とともに庶民にも広く使われるようになりました。
この夜着のおかげで、寒い冬もあたたかく過ごせたのでしょう。
江戸時代になるとさらに木綿が普及し、四角い形の掛け布団が登場しました。
その後明治時代に舶来品として羽毛布団が日本に持ち込まれましたが、一部の上流階級のみで使用されていました。
そして昭和40年代、ついに一般家庭でも羽毛布団が普及し始めましたが、40%もの物品税が課せられていたのです。
しかし、その後物品税が廃止されたことや、中国との国交回復がきっかけになり、急速に羽毛布団が広まり始めました。
急速に市場が拡大したことから粗悪品が適正でない価格で多く出回ることもありましたが、平成元年にJIS規格が制定されたことをきっかけに羽毛の品質が良くなっていきました。
羽毛布団は軽いので、上げ下ろしの際に体に負担がかかりません。
そして、住宅の気密性が高いこともありますが、暖かいので冬でも羽毛布団1枚で問題ありません。
また、コインランドリーで洗えるので、手入れが楽なところもポイントです。
寒さの厳しい夜は藁に潜って寝ていた時代から考えると、ものすごい進化です。
昔と変わった生活スタイルとお布団の進化
近年、特に電化製品の進化は凄まじいものがありますが、お布団の方はどうでしょう。
最近では、洗える布団がぞくぞく登場していますね。
以前はお布団は洗えないものとして生産されていましたが、生活スタイルの変化に合わせてお布団も変わってきています。
昔に比べて気密性が高い家が増え、梅雨の時期だけでなくともお布団にカビが生えてきやすくなってきたことも理由の一つでしょう。
確かに毎日使うものなので、洗濯機やシャワー洗えると安心して使えるでしょう。
また、軽いお布団やコンパクトに畳めるお布団等、種類が増えてきました。
以前から掛け布団は軽いものがありましたが、敷布団は一般的にまだまだ重く、上げ下ろしや日干し等、特にお年寄りには大変な重労働です。
簡単に手入れすることができ、しかも軽いとなると、それらの悩みが解決されるのではないでしょうか。
近い将来、お布団も服と同じように簡単に自宅で手入れをし、小さく畳んでクローゼットに収納する、というスタイルが定着するかもしれませんね。
お布団の歴史
お布団の歴史、いかがでしたか。
それぞれの時代で色々なものを工夫して作られていたお布団のことを知ると、睡眠がいかに大切にされてきたのかよくわかりますね。
そして、今の形になるまで、まさかこんなに年月がかかっているとは驚きです。
私たちが普段使っているお布団はまだ歴史が浅いです。
弥生時代まで遡らなくとも、身近なおじいちゃんおばあちゃんからも、今と違ったお布団について教えてもらえるはずですよ。