色の効果って不思議ですね。
黒い服を着れば気持ちが引き締まりますし、パステルカラーの服を着ればふんわり優しい気持ちになります。
では、色は寝室ではどのような効果を期待できるのでしょうか。
1日の約3分の1を過ごすところですから、寝具にはやはりリラックスできて、よく眠れそうな色を持ってきたいですね。
ここでは、寝室や寝具にはどんな色が向いているのかを解説していきます。
寝具の色の王様!心を癒やす「パステルカラー」
ある日本の大学の研究室が、学部生200人あまりを対象にストレスと色の関係についての調査した結果があります。
寝具の研究ではありませんが、30種類のストレスと薄めから濃い色まで36色を示し、各ストレスに対してどの色が1番癒やされるかアンケートを取ったのです。
このうち、上位8色に選ばれたのは全色ペールトーンでした。
ペールトーンとは、薄い・淡い色調という意味で、ベースの白に、ほんの少し原色を混ぜただけの、濁りのない色のことです。
パステルカラーだと思っていただければ、ほぼ間違いありません。
そして、この8色のうちの半分が緑系統の色でした。
この結果からすると、寝具に「緑」のパステルカラーを使えばストレスを軽減することが期待できることがわかりますね。
この研究が発表されたのは2013年のことですが、この研究を待つまでもなく、ベーシックな寝具の色は単色のパステルカラーが多いことに気づきませんか?
癒やし効果があることを、昔からシーツを売る方も買う方も、経験則で知っていたのでしょうか。
やはり、優しい色は心を和ませてくれるようです。
英国のホテルが選んだベストカラー「青」
もう1つ、今度は寝室の色についての有名な調査があります。
ある有名な英国のホテルが、英国の一般家庭2000軒を対象に、色事に睡眠時間の長さを調べたのです。
その中でトップに輝いたのが「青」でした。
この調査結果に基づき、部屋の内装を「青」を基調にした部屋を増やしたそうです。
また、1番注目していたのは「壁の色」でした。
この場合の「青」は、寝具だけでなくカーテンや壁、天井までを含んだ「青を基調とした部屋」という意味です。
この「青い寝室」は英国では大変人気があるようで、調査した家のほぼ6割、58%が「青」だったそうです。
しかもよく眠れるだけでなく、いつも気持ちよく起きることができると満足度も高かったのです。
この効果を期待して日本で「青い部屋」を目指そうとするなら、寝具と一緒にカーテンも「青」にした方がいいでしょうね。
しかし、そうシンプルな話ではなかったのです。
実は難しい「青」の効果!寝具はOK、ライトはNG?
この調査結果は発表されると話題になりました。
注目の理由は、1位が「青」だったからでした。
実は、当時から「青い光」は、眠気物質であるメラトニンを抑制して眠気を遠ざけ、体内時計を狂わせることが知られていました。
いわゆる、ブルーライトです。
最近、寝る前にテレビやパソコン、携帯電話を見過ぎると不眠症になる、と話題になっていますね。
それにも関わらず、この調査では58%もの人が「青い寝室」を選んでいるだけでなく、よく眠れて気持ちよく目が覚めると満足度までが高かったので関心を呼んだのです。
そのうち、人は青いものを見ると、血圧を下げ脈拍を安定させるセロトニンが出ることが分かってきました。
セロトニンは、うつ病に効果があると言われ、実際に治療にも利用される脳内ホルモンです。
1位という結果は、この癒やしホルモンと呼ばれる、セロトニンの効果によるものだったのです。
しかし、おかしいとは思いませんか?
同じ色なのに、効果がまるで正反対です。
青いライトの光はダメで、青い寝具や壁なら大丈夫ということでしょうか。
実は、英国の一般家庭でよい効果が出たのは、照明方法に秘密があったからでした。
照明による色の効果
英国は、小さな光源をたくさん使う、間接照明の国です。
しかも、ロウソクや電球のような穏やかな色の照明で、明るさに慣れた日本人には暗すぎるくらい灯りを絞ってあります。
実はこの調査では、4位に「銀色」の部屋が入っています。
日本ではあまり馴染みのない色ですが、金銀で装飾された部屋は、間接照明の下ではとても穏やかな、いい色あいになるのです。
同じように「青」も、暗めの照明では「灰色」や「黒」に近い色になって印象が変わります。
と言うことは、事実上、英国人は朝と夜では別の色の部屋にいることになるのです。
朝は朝日が「青」を浮き立たせてメラトニンの抑制効果で目覚めをよくし、夜は暗めの照明が色を落ち着かせてセロトニンの癒やしスイッチをオンにします。
だから「青い寝室」は、よく眠れて気持ちよく目覚めることができたのです。
しかし、これは英国でのお話です。
日本は天井からの直接照明で、昼間と同じ明るさが求められる傾向にあります。
しかも、この天井灯からはブルーライトが降り注いでいます。
もし日本の照明事情のまま英国と同じような「青い寝室」を作れば、目覚まし効果だけの眠れない部屋になってしまうでしょう。
日本で「青」の寝具やカーテンをそろえる場合には、ライトも英国風に暗めにする必要があるということですね。
ワーストカラーは「紫」と「茶色」!?
このように、海外の例を日本で試すとなると、少しひねりが必要な場合があります。
では、他の色はどうでしょう。
この調査は10色を対象に行われていますが、上から順に
①青、②黄色、③緑、④銀色、⑤オレンジ、⑥赤、⑦金色、⑧灰色、⑨茶色、⑩紫
という結果になりました。
10位の「紫」と9位の「茶色」は、1位と2時間近く睡眠時間に差があったとされています。
しかし、これも慎重に考えた方がいいようです。
実は、この調査結果を「色と睡眠時間」ではなく「色と職業」で比べると、また少し違う答えが浮かんでくるからです。
残念ながら10位の「紫」のデータがありませんでしたので、1位の「青」と9位の「茶色」の職業を比べてみることにしましょう。
(ちなみに「茶色」は風水では寝具・寝室向きとされている色です。)
まず、1位の「青い部屋」に多い職業は、建設業者・教師・公務員となっていました。
一方、9位の「茶色」は、ショップワーカーです。
ここから想像できるのは、まず「青」は比較的決まった勤務時間内で働く職業だということです。
これに対し、「茶色」は、正社員からパートタイマーまで、そして朝早くから夜遅くまで、様々な条件で働く人が含まれている可能性があることです。
つまり「青」と「茶色」の職業の人は、生活スタイルが違い過ぎるのです。
これが、同じ教師や公務員だけの調査ならまだランキングに信用がおけるのですが、そもそも睡眠不足の原因は部屋の色だけではありません。
この調査結果は、効果の裏づけのある「青」以外の色は、参考程度にとどめておいた方がいいかもしれませんね。
照明を使い分ければ、好きな色の寝具で効果が上がる
一般的に、リラックス効果のある色と言えば「青」「緑」「黄色(肌色)」「ピンク」という風に言われています。
しかし、「赤」や「紫」などの、鎮静とは逆方向の色が好きな方もいるでしょう。
好きな色に囲まれて安心できるのであれば、それが1番いい寝具や内装のあつらえ方ではないでしょうか。
好きな色で元気になれるなら、それはそれで大切な色の効果です。
ですが、やはり眠る前にはリラックスできる空間となるように、英国風の工夫をおすすめします。
最近は天井灯も、光度や色の調節ができるコントローラーがついているものも増えました。
できるだけ、夜は電球に近いオレンジ色に色を変え、光度も落としましょう。
寝具の鮮やかな色を、光で落ち着いた別の色にチェンジするのです。
また、間接照明器具を使うのもいいですね。
いったん壁などに光を当て、その反射光で部屋を明るくする間接照明は、光が柔らかくゆったりとした気分にしてくれます。
とは言え、日本の夜間の室内照明は全体的に明る過ぎる傾向にあります。
睡眠効果を考えるなら、夜間にパソコンや携帯電話を控えるのも大事ですが、部屋の光量を下げることも考えておきたいものですね。
寝具の色の効果的に得るために
パステルカラーに「緑」や「青」、睡眠に効果があると言われる色は色々あります。
しかし、眠りたいと思う割には、夜は明るい天井灯を点け、テレビを見ながらスマートフォンで動画などを見ていたりしていませんか?
どんな色を持ってきても、脳に直接訴えるブルーライトの威力は強烈なのです。
もしあなたが色の効果を期待して寝具選びをするのなら、それに合わせて照明方法にもぜひ気を配ってくださいね。