ふわふわのオーガンジーに囲まれた天蓋付きベッドは、女の子が一度は憧れる、お姫さまの必須アイテムではないでしょうか。
昔のお姫さまは確かに豪華な天蓋付きベッドで寝ていましたが、実はとても実用的な目的があってのことでした。
その1つが防寒です。
天蓋は夢見る女の子だけでなく、どんな年代の方にも向いています。
昔の防寒の知恵を借り、その恩恵を実感してみるのはいかがでしょうか。
天蓋(キャノピー)の始まり
いわゆる天蓋(キャノピー)はヨーロッパが発祥と言われています。
天蓋の役割は、簡単に言うと「傘」、すなわち大切な物や人に覆いをし、周りの過酷な環境から守ることにあります。
例えば、キリスト教会の祭壇を囲っている屋根付きの建造物、これも天蓋と呼ばれます。
王侯貴族のベッドの場合は、最初は壁に天井となる部分を取り付け、そこからカーテンを下げて小さな部屋を作っていたようです。
身分が高いからこそ、天井の高い広い部屋で寝起きしなければならない人々にとって、ベッドの防寒は切実な問題だったことでしょう。
そのうちベッド自体に天蓋を取り付けたり、ソファや椅子にも使えるよう持ち運びのできる天蓋ができました。
移動可能な天蓋は造り付けのものよりはるかに自由度が高く、様々な趣向を凝らしたものが残っています。
防寒や防塵、日よけ虫除けなどの実用的な目的だけでなく、どう見せるかにも重点を置いてあります。
その豪華さを見ると、ベッドは寝る場所以上に大切であり、権威の象徴であったことが良く分かります。
本気で防寒したいなら、天蓋付きベッド
天蓋付きベッドに付いているレースの布地は、ふわふわして可愛いだけの飾りに見えますが、実は防寒の役に立っています。
窓のレースのカーテンは薄くて目隠し程度にしか考えられていませんが、布地のカーテンとの間に1つ空気の層を作ることで断熱効果を狙っています。
天蓋付きベッドのレースも、これに似た効果を得られます。
室内の空気の流れをおだやかに遮り、ベッドの内側の空気が外に流れ出にくくしてくれます。
寒さがひどくない時期なら、これだけで防寒の効果を実感できるでしょう。
寒さが増してくればレースでは追いつかなくなってきますが、防寒を強化したいならレースではなく厚い布で覆う方法もあります。
天蓋付きベッドの強みは、もともと天蓋用のフレームがあるので、布を重くしてもその重量に耐えてくれることです。
圧迫感は否めませんが、部屋の天井や壁に穴を開けることもないので、賃貸物件にも向いていると言えるでしょう。
シングルで2万円ほどから買うことができます。
支柱が取り外せるタイプもあり、飽きたら普通のベッドとして使えるので便利です。
ベッドに後付け!クラゲ型天蓋と手作り天蓋
気楽に試してみたいなら、天井や壁に吊り下げて使う、優雅なクラゲのような姿の天蓋が売っています。
もともとは王さまお姫さまの時代、ピクニックなどのために考案されたものだったのではないでしょうか。
直径60~110センチほどで、ベッドの上から吊り下げて使います。
レースの長さは250センチ前後と長く、ベッドを丸ごと床まで覆えます。
お値段も手頃で2,000から5,000円ほどです。
重さは500~800グラムほどなので、どこでも持ち運べるのが強みです。
気を付けなければならないのは、すそが余れば踏んでしまう可能性があることです。
足にからまれば、転んでしまう危険性もありますので、レースのすそは足の届かない場所に置くようにしましょう。
もし、天井や壁の弱い部分に設置していれば、最悪の場合、穴を開けてしまいますので、気をつけておく必要はあります。
また、ホームページなどを参考に、自分で手作りすることもできます。
DIYが得意なら本格的な天蓋を作ってみたり、手芸が得意ならレースに凝った刺繍をしてみたり、得意分野で楽しむことができます。
難しく考えなくても、長いレースを買ってきて真ん中をひもで縛り、天井から下げるだけで立派な天蓋のできあがりです。
防寒を考えるなら、厚めの生地にするか、2重3重に布を重ねた方が良いでしょう。
気を付けたいのは、寝ている間に落ちてこないようにすることです。
眠っている人を守るはずが、重大な事故につながるかもしれません。
設置場所には、十分な注意が必要です。
夏の防寒!エアコンの冷えすぎ対策
暑い時期に防寒とはおかしなものですが、夏にエアコンによる冷えに悩んでいる方は、女性やお年寄りに意外にも多いものです。
そうかと言って、寝ている間エアコンを全く使わない訳にもいきません。
寒さの原因は、1つにはベッドとエアコンの位置関係にあります。
ベッドは、エアコンの吹き出し口の下に置かないのが原則ですが、間取りによってはなかなかそうもいきません。
そんな時には、天蓋で壁を作り風の進路を変えましょう。
強い冷たい風を分散し、寒さを和らげてくれます。
また、自分は寒がりなのに一緒に寝ている妻や夫が暑がりでいつもエアコンを低い温度に設定している、という場合もあるでしょう。
この場合、自分だけ天蓋付きベッドという訳にもいきませんので、吊り下げるタイプの天蓋を使えば大げさにならなくてすみます。
天蓋の得意技は、夏も冬も部屋と天蓋の中を別々に仕切ることができることです。
夏でもレースを少し厚手か目の細かいものにすれば、湿度を保つ力も上がりますから、防寒とともに乾燥の対策にも有効です。
もちろん夏場ですから、蚊帳の役目も期待できます。
赤ちゃんやペットを優しく防寒
ベビーベッドにも天蓋付きのものがあります。
どれも取り外し可能で、使い勝手も考慮されていますが、お値段を考えるとオープンタイプに手が伸びがちです。
ベビーベッドには、専用の天井から吊すタイプの天蓋があります。
エアコンの風対策や蚊帳としての機能を期待して、吊り下げ型天蓋を買うお母さんは多いでしょう。
アウトドア派のお母さんなら、持ち運びに便利、という理由かもしれません。
吊り下げ型ならキャンプ場でも大活躍です。
防寒、防風、防塵、防虫に加え、日差しを遮ったり、小さな子供部屋を作ることもできます。
人間だけでなく、ペットのベッドにペット用天蓋を付けたり、手作りで天蓋を作るのも良いでしょう。
鳥やハムスターの飼い主なら、夜寝る時に防寒のためにケージに布を掛けるのが常識ですが、これは立派な天蓋ではないでしょうか。
年をとって寒がったり、病気で寝ている時間の長い犬猫には、天蓋付きベッドは良い休息場所になるでしょう。
このように天蓋は赤ちゃんだけでなく、小さな命も守ってくれるのです。
天蓋付きベッドのニューフェイス
天蓋の定義を少し広げて見れば、蚊帳も天蓋の一種だと分かります。
かつては蚊を防ぐだけで防寒とは無縁でしたが、エアコンが活躍する現代においては、天蓋同様冷気を遮断する役目を果たすようになりました。
蚊帳は虫が入って来れないように、目の細かい網を使っています。
それがエアコンの冷風対策に役に立つのです。
鴨居に吊り下げるのが一般的ですが、ベッドを四角くすっぽり囲う一見天蓋と見間違えるようなものもあります。
また、テントも天蓋付きベッドの一種と考えて良いでしょう。
テントはアウトドアで使うものですが、最近ではテントの中にマットレスを敷いてそれをベッドの上に置いて使う、室内用のテント型ベッドがあります。
そもそもテントには、雪山でも使えるような素材が使われていますから、風を通さず防寒にはうってつけです。
中は天井が低く、押し入れにマットレスを敷いて寝ているようなものもあります。
デザインはテントらしくさっぱりしているので、そこは好みの分かれるところです。
今も昔もみんなぐっすり眠りたい
天蓋が防寒に効果的だと言っても、光熱費が激減するほどではありません。
防寒目的で作られたテントベッドでも4℃ほどですから、天蓋で得られる保温効果はせいぜい1℃~2℃でしょう。
ですが、寒い時期の室内では、微風でも寒く感じるものです。
寝ている間にその風を遮ってくれれば、無意識に首を引っ込める回数も減るでしょう。
天蓋は王さまやお姫さまたちが安眠のためにあみ出した答えの1つです。
昔の知恵の結晶である天蓋を、現代の日本で応用してみるのも悪くない話ではないでしょうか。