高齢者の方で、なかなか長時間眠ることが難しくなったというケースは多いのではないでしょうか。
ご家族で一緒に暮らしている場合、気を使い、生活リズムも変わって疲れてしまうこともありますよね。
実は、年齢によって睡眠時間が変わることは、普通のことなのです。
レム睡眠とノンレム睡眠について知ると、それがよくわかります。
ちょっとした理解によって、意識は変わるかもしれませんよ。
レム睡眠とは?
身体は深く眠っている状態であるはずなのに、脳は起きているような浅い眠りのことをレム睡眠と言います。
学名でいうと、レム睡眠の「レム(REM)」は、「急速眼球運動=Rapid Eye Movement」の頭文字を繋げた名前になります。
これはレム睡眠の特徴の一つでもあります。
この時に観る夢は、鮮明で情緒も感じやすいものが多いと言われています。
その中で、脳は体の機能の点検や、頭の中の情報整理、記憶の固定という仕事を行っているとされています。
しかし、目覚めの準備状態でもあります。
そのため、この時に目覚めるとすっきりとした気分で起きれる状態でもあります。
呼吸や脈は安定していませんが、問題はありません。
また、前途した「急速眼球運動」とは、目がきょろきょろと動いた状態を表します。
眠りが浅く、夢を鮮明に覚えている状態である、といったことが、レム睡眠の特徴です。
高齢者に向かうにつれ、このレム睡眠が少なくなっていきます。
ノンレム睡眠とは?
一方、脳が深く眠っている状態が、ノンレム睡眠です。
ノンレム睡眠は、眠りの深さによって4段階に分けられています。
浅い眠りから深い眠りと段階を踏み、逆に深い眠りから浅い眠りに移っていくと、最終的にレム睡眠になります。
ノンレム睡眠は、急速眼球運動が見られないことから、“レムではない(Non REM)睡眠”という意味で「ノンレム睡眠」と呼ばれています。
入眠直後に現れるのはノンレム睡眠であり、居眠りは、ほとんどがノンレム睡眠です。
そのため、空いた時間にほんの少し居眠りするだけでも、脳の休息になると言われています。
深い眠りの中にいるので、夢をほとんど観ず、呼吸回数や脈拍は安定していますが少なくなります。
しかし、身体を支える筋肉だけはしっかりと働いてます。
高齢者になっても、基本的にはノンレム睡眠の時間は変わりません。
脳を休ませるしっかりとした睡眠はとても重要なのです。
高齢者でも睡眠効率をあげれば良い睡眠がとれる!
寝床に入ってからすんなり眠り、目覚めてからスムーズに出られているかどうかを測る数値として、「睡眠効率」というものがあります。
これが85%以上であることを目指すといいと言われています。
睡眠効率は、次のような計算式で算出します。
①寝床に入った時間
②寝床から出た時間
③実際に眠っていた時間
①から②までの時間を、④寝床にいた時間とします。
そして、③÷④×100をすると、睡眠効率が算出されます。
例えば、0時に寝床に入って、朝6時に寝床から出たものの、5時に目が覚めていて、睡眠時間が5時間だった場合を計算してみます。
その場合、5÷6×100となるので、睡眠効率は83%となります。
この睡眠効率は、高いほど寝つきと寝起きに時間が掛かっていないこととなり、睡眠の質がよいと判断することが出来ます。
そのため、睡眠効率の目標が85%以上に設定されています。
睡眠効率85%とは、だいたい寝床に入ってから眠るまでの時間と、目覚めてから寝床を出るまでの時間が、それぞれ30分以内に収まっている時間です。
高齢者の方は早寝早起きと言いますが、実際に寝床にいる時間はどうなっているのでしょうか?
そういった面でも考えてみると、快適な睡眠をとっているかの判断ができますよね。
高齢者の方はレム睡眠が短い分睡眠時間が短いことも多く、快適な睡眠をとっていないと言われることもありますが、実際はどうなのか考えてみましょう。
高齢者はレム睡眠が少ない?
人間は年齢を重ねるほど、必要な睡眠時間が減ってきます。
睡眠時間は産まれたばかりの時が最も多く、高齢者に近づくにつれて徐々に減っていきます。
18歳以降になると、成人と同じ程度の時間数に安定し、40代から再び睡眠時間が短くなっていきます。
このように年齢によって睡眠時間が短くなる理由は、2つあります。
1つは基礎代謝が減っていくことです。
睡眠中には脳や身体は休んでいると思っている方も多いと思いますが、実は、非常に活発に代謝活動をしています。
代謝とは、身体の中に取り入れた物質を、新しく別の物質に変えることです。
食べ物を分解して、栄養素に変える様子を思い浮かべていただくと、わかりやすいと思います。
基礎代謝は、年齢を重ねると低下していきます。
すると、睡眠を持続することができなくなり、睡眠時間が短くなります。
つまり、眠る体力が低下してくるということです。
基礎代謝量が多い年齢のころと同じような睡眠が、していられなくなるということですね。
そして、もう1つが、情報処理に関することです。
睡眠中の脳には、昼間の活動によって脳内にたまった情報を、取捨選択するという働きがあります。
生まれたての赤ちゃんは、全てのことが初体験なので、この睡眠中の作業時間が長くとられています。
しかし、40代を過ぎると、新しい場面に遭遇してもこれまでの経験に基づいてどのように振る舞えば良いのかが、だいたいわかります。
初体験も減ってくるので、昼間に脳内に溜め込む情報量は少なくなっていき、睡眠中の情報処理時間が短くて済むようになっていくと考えられています。
このような行動はレム睡眠に行われるので、ノンレム睡眠が同じであっても、レム睡眠が少なくなっていき、年齢を重ねることで睡眠時間が短くなるのは自然な現象なのです。
高齢者と呼ばれる前に睡眠リズムは変化する
レム睡眠、ノンレム睡眠について、ご理解していただけたでしょうか。
統計学的な数字になってしまうのですが、睡眠リズムは性別関係なく、「55歳」が睡眠の個人差が大きくなる年齢のようです。
高齢者と呼ばれる年齢の前には睡眠リズムが変わってくる、ということになりますね。
しかし、55歳すぎても20代と変わらずぐっすり長く眠れる人もいれば、55歳になって急に途中で目覚めたり、早く起きてしまうようになる人もいます。
以前に比べて眠れなくなった、と自覚した時が睡眠セルフケアをスタートするタイミングです。
40~50代以降の方が目標とするには、3つのポイントがあります。
1)3時間は必ず、しっかり眠れている
2)寝つきと寝起きがいい
3)起床から4時間後まで、しゃきっと活動している
この3つのポイントができていれば、だいたい適切な睡眠ができているということになります。
少し気を付けてみましょう。
睡眠時間の調整方法!不安になりすぎないことが大切
人間の睡眠は前半で深く眠り、後半はほとんど起床準備をしています。
睡眠は、約90分のリズムでレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルを繰り返します。
深い睡眠であるノンレム睡眠はほとんど、最初の90分の2サイクルまでにしか現れません。
この3時間がぐっすり眠れていれば良いのです。
ですが、朝早く起きてしまう日が続くと不安になりますよね。
高齢者の方にも多いのではないでしょうか?
そういう方は、就寝を少し遅らせていき、睡眠をコンパクトにして目標とする起床時間までずらしてみてください。
睡眠の調整は、気長に2週間単位くらいで行うのがおすすめです。
まず最初に2週間で徐々に就寝を遅らせていき、目標の起床時間まで眠れるようになったら、そのまま2週間キープします。
この間、起床から4時間後の眠気をチェックしてみるといいですよ。
この時間帯に眠気があったら、次の2週間で15~30分程度就寝を早めます。
起床時間を変えずに睡眠時間数を増やしてみて、起床4時間後の眠気がみられなくなったら、最適な睡眠サイクルだと言えるでしょう。
しかし、睡眠の重要性がわかっていても、夜更かししたり朝ゆっくり起きることは心地いいので、止められない人もいます。
休日にベッドで横になって読書をし、のんびりしていていつの間にか寝ている…というのは幸せな時間ですよね。
このような心地良い時間は、プレッシャーが強い今の生活を乗り切るための、貴重なリラックスタイムでもあります。
ですから、全て規則正しい生活をしなければならないと思わずに、最低限のポイントだけを押さえて、あとは自由に過ごすのもいいでしょう。
大切なのは、昼寝などを習慣化させて夜寝れなくなってしまわないようにすることです。
小さな理解が大きな理解に
いかがだったでしょうか?
睡眠の違いを知ると、それだけで一緒に暮らしていくうえでの生活のリズムが見えてきますよね。
実のご両親にしても、長く一緒に暮らしていると、睡眠時間がだいぶ変わってくることもあるのではないでしょうか?
それによって、こちらの睡眠時間について理解してもらえないこともあるかもしれません。
そんなときは、「うるさいなあ」という風に険悪なムードを作らず、睡眠の違いを伝えていくことで、理解してもらえるかもしれませんよ。