「前日早めに寝ても翌朝なかなか起きられない、疲れもとれていない…。」
そんな時、単純に寝不足なだけだからたくさん眠れば問題ない、などと思い込んでしまってはいませんか?
それは睡眠の量が足りないからではなく、睡眠の質に問題があるかもしれないのです。
最近、メディアなどでもよくいわれている、質の高い睡眠とはどんなものなのでしょうか?
また、簡単に誰もがとれるものなのでしょうか?
今回は睡眠と質について、また量との関係も踏まえて詳しくご紹介します。
睡眠の質を上げてキープ!眠りのパターンを知っておこう
睡眠は浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠の2種類に分かれ、その状態が交互に繰り返されます。
眠りについて最初にあらわれるのはノンレム睡眠で、およそ90分続いたあとに、レム睡眠が90分前後続きます。
それを、一晩に4、5回繰り返して、ノンレム睡眠は浅く短いものに変わっていきますが、レム睡眠は明け方にかけて長くなっていき、朝の目覚めとなります。
睡眠の質を上げるには、まず、この眠りのパターンに合わせ、自身でコントロールすることが重要です。
最初のノンレム睡眠が一番長く深いものになりますが、多くの成長ホルモンが分泌されるので、ここをしっかりととっておけば、必要な睡眠の量がとれない場合でも、よい睡眠をキープしていくことが可能になるわけです。
では、どう睡眠をコントロールすることで睡眠の質を上げ、キープすることができるのかを、次にみていきましょう。
睡眠量が不足しても質のよい深い眠りで効率よく
質の高い睡眠をとり、それをキープしていくために必要なのは、睡眠中に分泌される成長ホルモンとよばれるものです。
これは細胞の修復や新陳代謝、昼間の活動も支えますが、寝ているときにしか分泌されません。
ここ最近の研究で、眠りについてから一番最初のノンレム睡眠中にもっとも多く成長ホルモンの分泌があることがわかってきました。
つまり、睡眠の量を削らなければならないという場合でも、最初のノンレム睡眠を深いものにすれば、より多くの成長ホルモンが分泌され、睡眠の質が上がるのです。
気をつけたいのは、就寝と起床の時間は毎日同じにしておくこと。
眠りのリズムを脳に記憶させることで成長ホルモンの分泌量も安定し、質のよい睡眠をキープすることができるのです。
毎日の就寝時間から大きくずれるような場合は、ノンレム睡眠時の成長ホルモンの分泌も減ってしまうので、早く起きて調整するといった睡眠時間のコントロールをしていきましょう。
また、スムーズな眠りにつくためには、睡眠ホルモンといわれる物質が大きく関係しています。
続いては、その睡眠ホルモンについて詳しくご説明します。
体内時計を動かし眠りをささえる睡眠ホルモンとは
夜になると自然に眠気がやってきて、朝になればまた目が覚める…。
これは体内時計が働いているからです。
夜なかなか寝つけなかったり、睡眠の量が減って起床時間になっても起きられないなど、この体内時計が狂うと睡眠のバランス自体が崩れてきてしまいます。
この体内時計を調節しているのがセロトニン、メラトニンで、睡眠に働きかけることから、睡眠ホルモンともいわれます。
セロトニンは覚醒を促し日中に分泌される物質で、夜になるとメラトニンとなります。
セロトニンはメラトニンのもとにもなっており、セロトニンが不足するとメラトニンの生成がうまくいかず、体内時計が乱れるため、睡眠の質にも支障をきたします。
セロトニンを増やすために必要なのは、朝の光を浴びること。
一日、30分程度で大丈夫です。
朝、カーテンを開けて光をとり入れるだけでも効果があります。
また、ウォーキングなどの単調な運動も有効です。
夜になり、昼間の活発なセロトニンの代わりにメラトニンが分泌されると、体温が下がり自然に眠くなります。
メラトニンは暗い場所でより増えるので、パソコンやスマホなどのブルーライトは避けて、就寝1、2時間前には部屋の照明も落とすなど、眠りの環境を整えましょう。
自律神経のバランスを保って睡眠サイクルをキープ
セロトニンやメラトニンが睡眠のリズムに欠かせないことをご説明しましたが、現代はライフスタイルの多様化や就寝前のスマホ、パソコンなど、脳にあたえる刺激もさまざまに増えています。
また、ストレスや疲労でも脳が活発になるため、自律神経の乱れにつながりやすく注意が必要です。
自律神経は、活動的になる日中の交感神経と、夜にかけて徐々にリラックスさせる副交感神経が常にバランスを保っています。
夜、眠れないときなどは副交感神経との交代がうまくいかず、交感神経が優位になっている状態といえます。
この自律神経のバランスが崩れると体内時計が正常に働かなくなり、寝つきや寝起きが悪くなる、眠っても翌朝に疲れが残るなど、日常生活にも影響を及ぼします。
また、睡眠時間が不規則になると、ノンレム睡眠下での成長ホルモンの分泌も減ります。
睡眠の量が少ないうえに質の悪い睡眠しか得られないため、免疫力の低下やその結果、病気になりやすくなるといった危険性もあるのです。
睡眠サイクルが乱れたまま習慣化してしまうと、元に戻すのも容易ではなくなります。
しかし、放っておくと体や精神面での影響が出てくる場合もあり注意が必要です。
いったいどんな影響をもたらすのかを、次に詳しくみていきましょう。
睡眠量の減少・質の低下が招くトラブル
睡眠サイクルが乱れ、睡眠の質が低下したままの状態が続くと、寝ている間におこなわれる体の修復や回復が十分にいきわたらないので、疲労が蓄積されてしまいます。
体の免疫機能も下がるので、風邪をひきやすくなかなか治らないこと、また、生活習慣病のリスクも高めることにもなってしまうのです。
肌のターンオーバー(新陳代謝)も正しくおこなわれないため、ケアしてもかえってシミの原因になったり、肌トラブルを招くこともあります。
さらには、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌が減り、代わりにグレリンという食欲を増加させるホルモンの分泌が増えて太ることにつながってしまうのです。
特に女性にとっては、精神的にも大きなダメージとなりかねません。
また、
・必要な睡眠の量がとれずに慢性的な睡眠不足となり、眠りにつくまで30分以上はかかる
・眠りが浅く、寝ても途中で目が覚めてしまったり、起床の2時間以上前に起きてしまい眠れなくなる
といったことがあれば要注意です。
いわゆる不眠、睡眠障害の可能性があります。
なかなか改善できない場合は、専門家の判断が必要です。
こうした悪い睡眠サイクルによるさまざまな影響が体の不調となってあらわれてしまう前に、睡眠環境を整えて自分に合った睡眠のリズムを取り戻しましょう。
自分に合った睡眠の量って?睡眠リズムをつくるポイント
睡眠のリズムを知るために、まずは、自分にとって最適な睡眠時間を把握しましょう。
アメリカの調査データでは7時間睡眠をとる人の死亡率がもっとも低い、というものがありますが、実際には年齢、性別、生活環境、遺伝子レベルの違いなど個人差があります。
7時間の前後1、2時間で睡眠時間を調節してみて、朝目覚めがよく日中も眠気を感じることなくいられるのが、自分にとってのベスト。
ただ、ノンレム睡眠の質でも変わってくるので、普段の食事時間や就寝・起床時間で、なるべく同じ条件のもとにおこなうようにしてください。
日常生活においてのポイントとしては、
・就寝、起床時間を同じにし、睡眠の量を減らす場合は起床時間を早める工夫を
・毎朝日光を浴びて体内時計をリセット
・食事は3食きちんととり、習慣として脳に記憶させる
・夜は食事(飲酒も)を寝る3時間前までにする(入浴は1時間前に)
・首や肩が凝るなどの場合は、枕やマットレスを見直してみる
また、睡眠物質のメラトニンを増やすためにも、寝る1、2時間ほど前から明かりを暗くし、自然に眠りに入れる環境にしておきます。
何より、自分がリラックスして眠りにつけるのが一番。
適した睡眠リズムと、深く質のよい睡眠が得られれば、朝の目覚めも変わるのです。
しくみを知れば質も上がる!睡眠を味方につけよう!
厚生労働省の国民健康・栄養調査(2015)では平均睡眠時間が6時間未満の割合が増加傾向にあるとしており、やはり、忙しさによって睡眠時間を減らしてしまう人は多いようです。
質の高い睡眠や量との関係、質の低下があたえる体への影響など、さまざまにご紹介してきました。
簡単なチェックとして朝、起きた時に体に疲労がなく、ぐっすり眠れたと感じることが質のよい睡眠がとれたかの指標となります。
ぜひ、睡眠を一度見直してみてはいかがでしょうか。