忙しい毎日を送っている人にとって、睡眠の確保はなかなか難しいところです。
できれば7時間以上の睡眠をとりたいところですが、そうもいかないというのが現状のようです。
日本では、通勤電車の中で眠っている人がとても多いですが、はたして通勤電車で眠ることは睡眠不足の解消や心身の健康のために、よいことなのでしょうか?
そこで、今回は、通勤電車内での睡眠の体への影響などをまとめてみました。
通勤電車の中で眠っている人が多い日本
地域によって、お勤めしている人の通勤電車に揺られている時間には差がありますが、たとえば首都圏では、通勤時間が1時間程度にもなる、というのはあたりまえのように多いです。
そして、通勤に費やす時間が長くなればなるほど、睡眠時間が削られていくことにもつながります。
必要と感じる睡眠時間というのは、人それぞれ個人差があるものですが、病気になりにくい睡眠時間は6時間半~7時間くらいだという研究結果が出ています。
しかし、社会人で7時間の睡眠時間を確保できている人は、かなり少ないようです。
そこで、日々の睡眠不足を解消するかのように、冒頭でもお話ししたように、日本では、多くの会社勤めの人が通勤電車の中で眠っています。
しかし、海外では、治安の関係から、電車の中で眠っている人はあまりいません。
このことから、私たち日本人は、治安のよいところに住んでいることを、喜ばなくてはいけないですね。
通勤電車内での睡眠は朝と夕では違う
通勤電車での睡眠とひとことでいっても、朝と夕方、夜があります。
実は、朝の出勤途中と夕方や夜の帰宅途中の電車の中で眠るのでは、睡眠が与える体への影響が違うのです。
自律神経が正常に働いていれば、私たちの体温は朝目覚めた時は低く、そこから徐々に上がり始めて夕方頃が一番高くなる、というリズムがあります。
そして、夜になると再び体の深部体温を下げて、眠りに入る体勢を整えるのです。
もし、夕方から夜の通勤電車の中で眠ると、眠りに入る体勢や眠りそのものによって、体温は下がってしまいます。
このように体温が高くなる時間帯に体温が下がってしまうことで、本来体温を下げなければいけないはずの時間に体温がしっかり下がりません。
そのため、寝付きが悪くなったり、本来の眠りの質が低下してしまうことにつながるのです。
帰宅途中の電車の中では眠らないようにすることが、夜の睡眠の質を下げないためには重要事項、ということになります。
睡眠不足を解消!朝の通勤電車内での睡眠
夕方から夜にかけて、電車の中で眠ってしまうことのデメリットをご説明しましたが、朝の通勤途中に眠ってしまうことは、決してデメリットだけではないのです。
私たちの体温は朝、目覚めたときに低くて、夕方が一番高いとお話ししたことを考えていただければ、よくわかっていただけると思います。
眠りに入るときには深部体温を下げることになるので、元々体温が低い朝方に電車の中で眠ることは、人間の生体リズムに反していないと言えます。
むしろ、自律神経の働きを乱すことなく、日頃の睡眠不足を解消するために、朝、電車の中で少しの時間眠ることは理にかなっているのです。
ただし、あくまでも「短い時間」という制約付きです。
昼寝で最適な時間は、20分以内くらいと言われています。
1時間以上のお昼寝は、かえって体調を崩す元になるとも言われているので注意が必要です。
朝、電車の中で寝る時間も20分以内に抑えられるのであれば、決して悪いことではありません。
「寝てしまった!」と後悔する必要はない、ということですね。
夕方から夜の通勤電車内では眠らないように!
通勤で電車に乗っている時間が1時間以上の場合、最初から眠ってしまうと、1時間まるまる寝てしまうことにつながります。
「20分たったから、起きよう!」ということは、意思がよほど強い人でないと難しいものです。
そこで、電車に乗って座ってから30分は「本を読んだり、スマホを見たりしてもいい時間」という決まりごとを自分で作ってみましょう。
そして、時間がきたら睡眠をとってもかまわない、というルールにするのです。
寝過ごしてしまわないように、イアホンをして眠り、降車駅近くに着いたら、タイマーで音楽が鳴るようにしたり、ポケットのアラーム(バイブ)が振動するようにしておきましょう。
それよりもおすすめは、イアホンをしておき、タイマーで音楽が鳴るようにすることです。
たとえ、眠りに入らなくても、目を瞑っているだけでも、目だけでなく脳を休めることにつながります。
電車で起きていると、ついついスマホを見てしまうという、スマホ症候群になるよりは、電車の中での20分の仮眠タイムをとってみることをおすすめします。
通勤電車内での睡眠はどうして気持ちがいいのか!?
通勤電車の中で眠ると気持ちよく感じるのには、実は理由があります。
もちろん、仕事で疲れているということも関係していますが、それだけでは決してありません。
電車はレールの上を走っていることから、同じようなリズムの揺れが続きます。
このことは、私たちがお母さんのおなかの中にいたときの揺れや心臓の音に似ているのです。
「なんとなく安心できる揺れ」というわけです。
そして、人は規則正しい揺れの中に関しては、安心していられるとも言われており、逆に不規則な揺れ、突発的な揺れに対しては注意をかきたてられるようにできているようなのです。
また、電車の中での眠りの特徴には、もう一つあります。
ときには寝過ごす人もいますが、電車の中で寝ていてもなぜか目的地近くになると、ちゃんと目覚める事がありませんか。
その理由は、熟睡していないからです。
電車の中で眠っている状態は、「注意睡眠」と言われる眠りになります。
注意睡眠のときには、眠っているけれども意識のどこかで周囲に注意を払っているような状態なのです。
また、寒い季節は足元の暖房によって、眠気を誘われ、心地よく眠れるものです。
帰りの通勤電車内で眠らないために
電車の中での「注意睡眠」では、熟睡していないのですが、風邪をひいているときや、その他に体調不良のときには、ときとして電車の中でも熟睡状態におちることがあります。
また、風邪をひいているときに、電車の中でぐっすり眠ってしまい、目覚めたときにはすっかり体が軽くなっていた、という例があります。
このようなときには、体が今すぐの睡眠を求めていたということです。
電車の中では20分以上眠らないようにしようと思っても、起きてはいられないときというのはあるものです。
そのような特別な例は別として、通常は日頃の疲れや睡眠不足の影響と、電車の揺れの気持ちよさから、眠ることが習慣になってしまっている、ということも多いものです。
睡眠時間が足りず、通勤電車の中で必要以上に眠ってしまうという場合は、まずは生活習慣を見直してみることをおすすめします。
夜、15分でも20分でも早く眠りにつくようにしてみましょう。
眠る前、4時間以内の食事は、眠っている間も働き続けてくれる消化器官の疲労につながります。
同じ理由で「暴飲暴食」も上質な睡眠の妨げになります。
夜の睡眠の質を上げれば、電車の中で「眠くて眠くて仕方がない」ということは避けられます。
朝の電車の中の睡眠は悪くない
通勤時、電車の中で眠ると体にいいのか悪いのか、ということの結論は、体温が上がり切れていない朝の通勤時の睡眠は睡眠時間にプラスしても効果的で、睡眠不足解消の役に立つ、ということになります。
しかし、あくまで、20分以内にとどめておきましょう。
そして、夕方から夜にかけては電車の中では眠らないようにすることが、体内リズムの面から大切だということになります。