今や、世界でも有数の高齢化社会である日本。
特に在宅介護をされている場合、食事の介助や排泄物の処理など、本当に大変な日々を過ごしていらっしゃる方も多いと思います。
その中でも、介護される側にとって重要なものの1つが睡眠です。
快適な睡眠は心身の安定にとても必要なもの。
そのためには、適切なシーツ交換の手順も重要な要因です。
そこで、今回は、快適な睡眠を得るための、上手なシーツ交換の手順をご紹介していきます。
現在の在宅介護の現状とは?
2015年度には介護給付費の実受給者数は600万人を超え、本格的な介護社会の到来を迎えつつあります。
今回は、より負担の大きい在宅介護の現状を見ていきましょう。
在宅介護サービスを受けた方は、平成27年度には累計で4600万人にものぼり、多くの方が在宅介護をされている現状が浮かび上がっています。
その中でも、重度・最重度の介護が必要な要介護4・5の方も、それぞれ400万人・270万人以上といわれています。
排泄物の処理や食事の介助、シーツ交換など、身の回りの世話だけでもとても大変で、家族に負担が重くのしかかっています。
そんな厳しい在宅介護ですが、特に最近問題になっているのが、介護離職についてです。
平成24年度の統計によると、介護のため離職した人は年間10万人にも昇るとされています。
家事と介護の生活は、日々のストレスを発散させる場を見つけるのも難しい上に負担も重く、心身ともに辛いと感じられる方も多いのが現状です。
そのため、介護サービスを受けられる施設への入所を希望している方もいらっしゃいますが、一筋縄ではいかない場合が多いのです。
その理由としては、次の2点が挙げられます。
①空きがない
介護施設の中で最も人気があるのが特別養護老人ホームです。
ここは、原則65才上・要介護3以上の認定を受けられた方を対象としているところで、利用料も他の施設に比べると安いという特徴があります。
そのため、入居希望者が多く、きちんとした手順を踏んでも待たされているという方が多くいらっしゃいます。
平成27年3月の時点で、全国で約36万人以上の方が待機されているという統計も発表されています。
②経済的余裕がない
上記に書いた通り、安く入れる特別養護老人ホームはなかなか入れません。
では、他の民間が経営している介護付き有料老人ホームなどに入ればいいのかというと、それもなかなか難しいのです。
民間が経営している老人ホームは、24時間介護が受けられたり、医療機関と提携しているところが多く、医療面でも充実しているというメリットもありますが、その分費用が高くなっています。
そのため、経済的余裕がないご家庭は、在宅で介護をするしか選択肢がないという結果になってしまっています。
適切なシーツ交換の手順を覚えることで介護者の負担を軽くする?
上記のように、在宅介護をされている方はとても大きな負担を強いられています。
夜に起こされてなかなかぐっすりと眠れなかったり、ずっと目を離せなくて自分の時間が持てなかったりと、本当に大変な生活です。
では、少しでも介護者の負担を少なくするためにはどうしたらよいのでしょうか。
いろいろな方法があると思いますが、今回は睡眠というキーワードをもとに考えてみていきましょう。
睡眠は、人生の1/3を占めるといわれるほど重要なものです。
もちろん、介護者にとっても、介護される方にとっても快適な睡眠は体調にも影響する大事なものです。
しかし、介護される方がゆっくりと安眠してくれて初めて、介護者もゆっくりと休むことができます。
ですので介護者にとっては、介護される方の安眠こそが重要なのではないでしょうか。
そこで、介護される方が安眠するための1つの方法として、適切なシーツ交換の手順を覚えることが重要になってきます。
例えば、お年寄りの肌は乾燥しやすく、固くなっているものです。
そのため、ベッドやお布団のシーツにしわがあると、床ずれの原因にもなってしまうことがあるのです。
また、シーツがずれてしまうと、寝ている時に気になってしまい眠れなくなるということも考えられます。
そうなってしまうと、眠れないという悪循環に陥ってしまい、身体的にも精神的にも負担が大きくなってしまいます。
やはり、適切なシーツ交換で寝具を整え、介護される方ができるだけ安眠できるように十分気を付けることが大切です。
シーツ交換の重要性
シーツ交換の手順にスポットを当てていますが、シーツ交換の重要性についてもう少し掘り下げてみましょう。
シーツ交換をするのは、シーツの清潔さを保つためにも非常に大切なことです。
特に、介護を受けられているお年寄りの方々は、抵抗力が弱くなっている方が多いので、汚れが付着し感染症にかかったということになると、取り返しがつかないことになるかもしれません。
そのため、極力、シーツは清潔に保っておきたいものです。
シーツは一見綺麗でも、汚れが付着している場合があります。
ここでは、汚れの原因となるものを見ていきましょう。
①汗や皮脂の汚れ
通常7〜8時間の睡眠でも、人間はコップ1〜2杯の汗をかいているといわれており、シーツには汗や皮脂が付きやすいものです。
介護されている方、特に要介護度が4や5など重度の方の場合、ベッドやお布団で過ごされる時間は他の方よりも長くなっており、通常の場合よりも、より汚れに接しやすいです。
②排泄物の汚れ
介護時、トイレが間に合わなかったり、横漏れしたりと、シーツを排泄物で汚すという場合もあります。
③カビやダニ
シーツの洗濯をおろそかにしていたり、お布団やマットレスをきちんと天日干ししていないと、湿気でカビやダニが発生することがあります。
カビやダニはアレルギーの原因にもなるので、抵抗力の弱いお年寄りの方は特に気を付けなければなりません。
このように、シーツにはいろんな汚れが付いてしまうものです。
少しでも介護される方が快適に眠れるよう、できれば、3〜5日に1回はシーツ交換をするのがおすすめです。
介護をする上でおすすめのシーツとは?
では、介護される方が安眠するには、どんなシーツがよいのでしょうか。
睡眠時に問題となるのが排泄です。
トイレに間に合わなかったり、量が多くて漏れてしまったりというこもとよくあることです。
そこで、そういう問題が起こった時におすすめのシーツをご紹介します。
①防水シーツ
失禁や下痢、嘔吐時などに便利なものが防水シーツです。
下のマットレスや敷布団まで漏れるのを防ぎます。
防水シーツにも種類があるので、それぞれ見ていきましょう。
*加工の仕方
【防水タイプ】
ポリウレタンフィルムがシーツの裏面に加工されており、シーツに吸収された水分をシーツの裏面でブロックするため、表面はさらっとしています。
動きの激しい人や1回の失禁量が多い人などに適しています。
【撥水タイプ】
シーツの表面に撥水加工がされているため、吸収した水分が裏面までいかないような造りになっています。
表面のみに加工が施されているため、通気性はよいが、水分量によってはシーツの裏面にまで染み込むことがあるので、動きが少ない方や体重が軽い人などに適しています。
*シーツの形
【部分タイプ】
これは、横長のシーツで、腰の部分のみをカバーするタイプです。
防水シーツは通気性が悪いため、あせもなど肌トラブルが起きやすいが、このタイプのシーツは腰の部分しかないので、肌トラブルを防ぎやすいのも特徴です。
また、シーツ交換の手順も簡単というメリットもあります。
【全身タイプ】
シーツの四隅にゴムが付いており、敷布団やマットレスにゴムで固定するタイプです。
動きが激しい人や、横漏れの心配がある人におすすめのシーツです。
【ボックスタイプ】
コの字や袋状になっているタイプのもので、マットレスの側面までもカバーできるので、マットレスをレンタルしている方などにおすすめのシーツになります。
②ラバーシーツ
防水シーツと同じようなものですが、裏面がビニールや塩化プラスチックなどで加工されており、完全防水コートになっています。
*シーツの形
【部分タイプ】
横長のシーツで、腰の部分をカバーするタイプです。
ラバーシーツは通気性が悪いため、多くの方がこの部分タイプを使用しています。
【全面防水タイプ】
敷布団やマットレス全体を覆うため、失禁の範囲が広がっても安心ですが、通気性が悪いため蒸れてしまうというデメリットがあります。
【ボックスタイプ】
敷布団を覆うので、シーツがずれないというメリットはありますが、通気性が悪いため蒸れてしまうといった問題もあります。
このように、介護時には、通常のシーツ+水分を吸収してくれる防水・ラバーシーツがおすすめです。
中には使い捨ての防水シーツなどもありますので、洗濯が面倒という方には使い捨てが便利です。
シーツ交換の手順とは?
では、どのような手順でシーツ交換をすればよいのでしょうか。
手順を見ていきましょう。
まず、用意するものがマットレス、シーツ、防水シーツもしくはラバーシーツです。
①部屋の換気を行い、ベッドの高さを介護者に合わせて調節します。
その際、腰痛予防の観点を考え、行って下さい。
②汚れているシーツを、四隅から中央に丸めていき、ほこりや汚れが周囲に飛び散らないようにしながら外します。
③ベッドの上にマットレスを敷きます。
④半分に折り畳んであるシーツをマットレスの中心に合わせて置き、枕元の部分を十分に覆うだけの長さを確保し、足元方向にしわを伸ばしながらシーツを広げていきます。
⑤マットレスの反対側へ、シーツのしわを伸ばしながら広げていきます。
⑥枕元のマットレスの下にシーツを入れ込んだら、サイドに出ている角のシーツを、マットレスと水平にして直角三角形になるように持ち上げ、そのままベッドに置き、きちんとしわを伸ばします。
⑦マットレス側面に垂れているシーツの角をマットレスの下に入れこんだら、残りの角も十分にしわを伸ばし、マットレスの下に入れこみます。
⑧足元のシーツも、枕元と同様の処理をします。
⑨介護される方の状態に合わせて防水シーツもしくはラバーシーツを敷きますが、この時もしわがでないようにきっちりと敷いていきます。
シーツのしわは床ずれの原因にもなってしまいますので、くれぐれもしわが出ないようにきっちりとシーツを敷いて下さい。
安眠するには、適切な手順でのシーツ交換以外に何がある?
ここまで、快適な睡眠が介護者の負担を減らす要因になるということをご紹介してきました。
ご紹介したように、定期的なシーツ交換や、正しい手順を覚えることは安眠するにあたり、重要なことです。
また、介護される方が安眠できる環境を作るためには、シーツだけでなく、他にもいくつか方法があります。
①生活リズムを整える
夜に熟睡してもらうには、やはり昼間の活動が重要になってきます。
お天気のよい日には散歩に連れて行ったり、デイサービスを利用したりと、できるだけ昼間は起きて過ごせるように工夫しましょう。
寝たきりの方はなかなか難しいですが、可能であれば、居室と寝室は分けておく方がよいでしょう。
②介護される方の好きなことを一緒にする
介護されている方も、なかなか自分では思い通りに動けないというストレスが溜まるものです。
そんな時、介護されている方の好きなことを一緒にするのもおすすめです。
例えば、お喋りが好きな方にはお喋りに付き合ったり、音楽が好きな方であれば一緒に音楽を聞いたりと、少しでも精神的にリラックスできるようにするのも大切です。
③快適な寝具を整える
特に、要介護4・5の方は、ベッドで過ごすことが多いと思います。
そういう方は特に、快適な寝具があるだけでも違います。
お金がかかってしまいますが、もし可能なら、質のよい寝具を用意してあげて下さい。
ここで、何点かおすすめの寝具をご紹介します。
【介護用マットレス】
床ずれ防止や寝心地のよさを追求するなら、必要となってくるのが介護用マットレスです。
介護される方の状況によって固さなども変わってくるので、慎重に選ぶ必要があります。
例えば、寝返りが自分でできる方であれば適度な固さがあるマットレス、寝返りが難しく、床ずれが心配な方には体圧分散マットレスがおすすめです。
【自動体位変換エアマット】
寝たきりの方におすすめなのがこのエアマットです。
介護される方の身体状況に合わせて、自動で体位を変換してくれ、床ずれ防止に効果的です。
これにより、2〜3時間おきに必要な体位変換の負担が大幅に軽減されます。
また、これは介護保険の対象になっているため、介護認定を受けている方はレンタルできるので、経済的にもお得な介護用品です。
快適な睡眠で、快適な日常生活を!
介護される方がより熟睡できるようシーツ交換の適切な手順などを見てきましたが、いかがでしたか?
毎日続く介護生活は、する側もされる側も何かとストレスが溜まってしんどいものです。
頭では分かっていても、ついイライラとしてあたってしまい、自己嫌悪に陥るという方も多いと思います。
できれば、お互い穏やかにゆったりとした毎日を送りたいですよね。
そのためにも、いろんな工夫をしながら、お互い快適な夜を過ごしましょう!