「アクアリウム」というのは、水生植物や昆虫なども含め、生き物を飼育している水槽のことです。
そのため、水族館の水槽はもちろん、メダカのいる水鉢もゲンゴロウのいる観察用プラスチックも、みんなアクアリウムです。
特に「金魚鉢」は、日本では一番なじみのあるアクアリウムですね。
最近では、ふんわりゆったり動く「クラゲ」が加わりました。
美しいクラゲのアクアリウムですが、インテリアにはどれだけ向いているのでしょうか?
アクアリウムとインテリアと…クラゲ?
日本には、金魚をインテリアとして数百年の間、愛でてきた歴史があります。
まだ、西洋の四角い水槽がなかった時代では、巾着型の可愛い金魚鉢やきれいな木目の木桶に入れて、「金魚を少しでも美しく見せよう」と楽しんできました。
しかし、金魚を飾る習慣は下火になり、現在は水族館のクラゲの大水槽に人々が憧れを抱く人もいます。
確かに巨大な水槽に無数に浮かぶクラゲの姿は幻想的ですし、足(触覚)を長くなびかせた大型クラゲは、ため息が出るほどの美しさです。
時間が止まったような優美な動きに魅せられ、「クラゲのアクアリウムがうちにあったら!」と思ってしまうのも当然ですね。
しかし、クラゲの飼育は金魚ほど簡単ではないようです。
理由のひとつは、そのサイズです。
例えば、触手が長く美しいアカクラゲは、成長すると長さが2メートル近くになります。
また、大水槽の群舞で人々の心をつかんだミズクラゲも、大きくなればカサの直径が30センチ近くにもなるのです。
そのため、最初は小さくても、いずれは成長したクラゲに見合うだけの、大きな水槽を準備しなければならなくなってきます。
うっかり数匹買えば、ぎゅうぎゅう詰めになってしまうかもしれません。
もちろんそれは、飼育の難しいクラゲを上手に育て上げた証であり、自慢できる話ではあるのです。
しかし「気がつけば部屋中クラゲの水槽だらけ」では、インテリアの本質から少し外れてしまうとも言えるでしょう。
優雅なクラゲの水槽!インテリアとしての問題点は?
もうひとつのマイナス要因は、成長が早く、寿命が短いことでしょう。
クラゲというと、カサがあって長い触手があるというイメージですが、それは色々な形で過ごすクラゲの一生のうちの、最後の姿なのです。
そこまで成長したクラゲの寿命は、だいたい半年から1年ほどと言われています。
金魚や熱帯魚は少なくとも数年は生きますので、これは大変な短さです。
しかも、たまたま弱い個体だったりすれば、半年も経たずに水槽が空になってしまう可能性があるのです。
ちなみに水族館の大水槽でも、同じ個体をずっと飼っているのではなく、常にクラゲを補充しています。
クラゲのアクアリウムをインテリアとして成立させるためには、水族館同様、上手く世代交代をさせなければならないのです。
また、食べたり食べられたりする「共食い」対策も必要で、その上、何かにぶつかって傷が付かないように、「クラゲを1種類だけ入れたら、あとは海水だけ」ということが鉄則です。
つまり、もしクラゲの育成が上手くいかなければ、空の水槽が部屋に鎮座しているだけの、淋しい時間を過ごすことになります。
生き物の愛好家なら、それも織り込み済みで問題ないでしょうが、インテリアとして考えるなら大いに問題アリですね。
クラゲのアクアリウムをインテリアとして導入するには?
クラゲに限らず、アクアリウムをインテリアとして導入しようと思った時は、迷うことなくレンタルすることをおすすめします。
レストランや病院の待合室、イベント会場などで、アクアリウムが置いてあるのを見かけたことはないでしょうか。
そういったアクアリウムをレンタルしてくれる専門業者にお願いして、設置からメンテナンスまで、全てお任せしてしまうのです。
生き物を飼うのには大変な労力が伴いますし、ましてクラゲは海の生き物ですから、適切な濃度の海水を用意するだけでも大変です。
その点、レンタルなら、おしゃれな水槽が大小取りそろえてありますし、水槽の掃除などのメンテナンスも全てお任せできます。
アクアリウムの一番のネックは、「必ず水槽は汚れるし、生物は死ぬ」ということなのです。
それが嫌になって、「次世代を飼うことにつながらなかった」というアクアリウム経験者は案外多いのではないでしょうか。
レンタルでは、2Lのペットボトルサイズの小さな水槽から、水族館にありそうな本格的な水槽まで、好みの水槽がレンタルできます。
また、透明なクラゲにぴったりのライトアップできる水槽も準備されていますし、欲しい形の水槽をオーダーメイドすることまで可能です。
もちろん、レンタル料はそれほど安いものではありません。
しかし、イベント用に1日から借りることもできるのです。
試しに1ヶ月だけ借りてみて、クラゲのアクアリウムがどんな感じなのか、様子を見るのも悪くないかもしれませんね。
アクアリウムに向くクラゲたち
では、仮に「アクアリウムをレンタルすることにした」としてみましょう。
どんなクラゲに家に来て欲しいですか?
クラゲというと、やはり足をリボンのように長くたなびかせたものがいいでしょうか。
それなら、先ほどご紹介した、アカクラゲのようなクラゲはいかがですか?
このタイプのクラゲは毒性も強く大きくなるので、通常なら水族館クラスの水槽でなければ飼うことができません。
しかし、レンタルならば、水槽に入るサイズの間だけ借りることが可能です。
ベッドサイドで、小さなアカクラゲがゆったり漂っている姿を鑑賞するのも夢ではないのです。
また、水族館のような、ミズクラゲの大群舞も可能です。
ミニチュアサイズになってしまいますが、それでも小さなお椀のようなクラゲが、ふんわり宙を舞う水槽がテーブルの上にあれば、いつまでも眺めていたくなることでしょう。
また、タコクラゲという、レトロなランプやシャンデリアのような、ぷっくり系のクラゲが泳いでいる姿も美しいものです。
クラゲの中では活発な方で、元気な姿が可愛いので、つい名前を付けたり「おはよう!」と声をかけたくなりそうです。
もちろん、クラゲの種類はこの3種類だけではありません。
ごひいきのクラゲを選んで、または、インテリアの目的に合ったクラゲを選んで、家に来てもらいましょう。
クラゲを自分で飼ってみる
短期間ならともかく、アクアリウムの長期レンタルは、個人の予算では難しいかもしれません。
そんな時には、思い切ってクラゲを飼ってみるのも良いかもしれません。
クラゲには弱い毒があり、刺され続ければハチのようにアナフィラキシーショックを起こすこともあるため、注意の必要な生き物ではあります。
しかし、最近はクラゲ専用のアクアリウムが売られていますし、飼育のノウハウも少しずつ蓄積されてきています。
以前よりも、ずっと飼いやすくなっているのは間違いありません。
ただインテリアとして考えるなら、それなりの見栄えが必要ですね。
そこでおすすめなのが、飼いやすさNo.1のサカサクラゲというクラゲです。
基本的には水槽の底や壁面に張り付いて、足を上に向けている変わり者です。
他のクラゲと違って浮くための水流を作る必要もなく、カサが上を向いているので、体を傷めるエアレーション(酸素の供給)に神経質になる必要もありません。
水中を漂う姿を見る楽しみはありませんが、小さな鉢に沈めれば、ひらひらした足がまるで水中花のような華やかさです。
また、サカサクラゲには青い色を持つものがいて、その目の覚めるような青は、とにかく破格の美しさです。
他にも、「ワイングラスでミズクラゲを飼う」という方法があります。
5ミリから30ミリくらいの小さいサイズなら、ミズクラゲもワイングラスサイズの入れ物で飼うことができるのです。
これはくらげに関する情報サイトで紹介されている方法なのですが、インテリアにぴったりの方法です。
ただ、どちらの方法も、バックヤードをしっかり充実させておく必要があります。
エサの卵を孵化させるための水槽や、成長したクラゲを入れる水槽、ほぼ毎日交換するための海水など、備えておかなければならないものはたくさんあります。
是非、ミニ水族館の館長さんになった気分で、クラゲを美しく演出してあげてください。
手軽なフェイククラゲのアクアリウム
リアルな世界にこだわらないのであれば、フェイククラゲのアクアリウムを検討してみるのもひとつの手です。
一般的には、「人工クラゲ」という名前で呼ばれているようです。
こちらは生き物ではないので水道水がそのまま使え、水苔が生えたら掃除をすれば良いだけですので、とても気が楽です。
ただ「フェイクは所詮フェイクだろう」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、昭和の半ば頃には、重りの付いたフェイク金魚をガラスコップに浮かべて楽しむ時代がありました。
コップに赤い金魚や黒い出目金が浮いているだけのシンプルなものでしたが、水中花を合わせたりして、なかなか風情のあるものでした。
最近は、金魚や蓮の花や葉っぱの形をした陶器の浮きを水鉢に浮かべるのが静かなブームですし、有名な絵師が作る超リアルで立体的な金魚の絵も大人気です。
どうやら、本物がだめならフェイクで楽しもうとするメンタリティーを、日本人は昔から持っているようです。
ならば「偽物」と下に見るのではなく、フェイクを思う存分楽しんでみましょう。
実際のところ、今はかなりリアルなフェイククラゲが売られています。
さすがに動きはぎこちないですが、それでも、一瞬本物かと見間違うような動きをするものも売っています。
また、フェイクなら魚や水草や岩などを同居させ、美しく仕上げることも可能です。
フェイククラゲを選ぶ時は、ある程度大きめの精巧なクラゲを選び、水槽も大きめにした方が本物らしく動いてくれますし、インテリアとしても見栄えがします。
フェイクでも、ゆったりと水槽を巡るクラゲを見るのはなかなか楽しいものですよ。
アクアリウムをインテリアに取り込む効能
「アクアリウムにはリラックス効果がある」という研究結果があるのだそうです。
しかし、このような研究を待つまでもなく、水族館でクラゲの水槽の前に立てば、誰しも解放された気分になるのではないでしょうか。
もしかすると、クラゲのゆっくりとした動きが、現代人の浅くなった呼吸を深いものにしてくれるのかもしれません。
あるいは、優雅な姿を追い続けていると、自然に心が空っぽになるのでしょうか。
いずれにしても、家でぼんやりクラゲを見つめる時間が取れるなら、クラゲのアクアリウムはインテリア以上の存在になってくれるでしょう。
相手は生き物ですので、安易に考えるのは問題ですが、仲良くなる方法を検討してみるのも悪くはないのではないでしょうか。