昭和レトロな部屋が目を引く団地。
住居不足を解消するため、高度成長期に盛んに団地が建ち始めました鉄筋コンクリート。
ガス、水道、水洗トイレ、当時それらは最新の生活スタイルとして憧れの存在でした。
近年では老築化高齢化が進み、空き部屋が目立つようになってきた団地ですが、今再び、ひそかに注目を集めて来ているのも事実です。
なぜ空き部屋が増えてきて、なぜまた戻る人が増えてきているのでしょう。
その生活模様を探ります。
そもそも昭和レトロって何?昭和レトロな部屋と団地とは?
①昭和レトロ
レトロとは懐古的、復古調であることです。
懐古趣味という言葉がありますが、それはいわゆる昔懐かしいものを集めたりそれを楽しんだりする趣味のことを指します。
以前に訪れたレトロブーム(1920年代から1950年代までの時代に対する懐古)は、懐古趣味の集大成と言えるでしょう。
つまり、昭和レトロとは、昭和に対するノスタルジックな思いや、戦前から高度成長期時代の生活模様に対する憧れの総称と言えます。
②昭和レトロな部屋と団地
高度成長期に盛んに現れた団地は、昭和レトロな部屋と聞いて、まず連想される住まいでしょう。
昭和レトロの対象となる時代の部屋の作りや団地の雰囲気は、日本の伝統的文化と近代的文化とを融合した空間作りと言えるでしょう。
そのため、現代の目まぐるしく変化をしていく日々の中で、昭和レトロ感あふれた部屋は癒しを求める現代人にとって、不思議と癒される空間となりつつあります。
団地住まいを選ぶ人々が今だにいなくならないのも、団地自体が今だになくならないのも、昭和レトロな部屋に癒しを求めてくる人が後を絶たないからだと言えるからでしょう。
昭和レトロな部屋、団地の佇まいを具体的に見ていこう
そんな癒しを醸し出している昭和レトロな部屋、そして団地とは具体的にどうなっているのでしょうか。
●ドアや、棚などが低めに作られている
玄関やリビング、寝室など各部屋のドアは今のものよりもずいぶん低めに作られています。
台所の流しや洗面台、備え付けの棚なんかも低い設定で作られています。
昔の日本人は今よりも平均身長が低かったので、それにあわせて作られたことが理由です。
そのため、少しかがんで洗い物をしなければいけないなどの不便さは否めません。
●団地は浴槽は基本的にタイル貼り
トイレの床に使われている場合もありますが、お風呂はほぼタイル貼りになっています。
今の真っ白な壁や床に囲まれたユニットバスより、タイルは温かみのある優しさも感じとれるでしょう。
リラックスタイムの癒しですね。
●カラフルな色合いの家具がある
家具や家電品については、ポップカラーをふんだんに使ったカラフルなものが多く使用されていました。
大きな花柄模様の炊飯器やポットを一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
また、引き出し全ての色が違う整理タンスや大きな絵が表面に描かれているタンスもどこかで目にしているでしょう。
こういったことから、昭和の時代を取り入れた昭和レトロな部屋というのは、現在より高いデザイン性をもったカラフルでおしゃれな部屋であることが分かります。
団地を外から眺めているだけでは想像もつかないかもしれませんが、部屋の中はとても愛らしいものがあふれているのです。
昭和レトロな部屋のイヤなとこ。団地のイヤなとこ
それでも、いくらデザイン性は高くても、機能性が悪ければ住み心地が良いとは言い切れません。
そこで昭和レトロな部屋のイヤなとこ、団地生活のイヤなとこもいくつか挙げてみましょう。
●カーテンや壁に好きな色を付けづらい
カラフルなものがたくさんあるのは心がウキウキします。
しかし、物自体がカラフルだと壁やカーテンに色を付けるのが難しくなります。
色がぶつかって見た目がうるさく感じてしまうからです。
せっかくの癒しの空間も目がチカチカしては落ち着くこともできません。
●お掃除がおろそかになる
色がたくさん付いていると、案外汚れがわからなくなるものです。
少しの傷が目立たなくなるのは嬉しいことですが、汚れまで目立たなくなると、お掃除もついついおろそかになるものです。
●部屋が少し狭い
団地の部屋は、団地間といって畳のサイズが少し小さいものが使用されております。
そのため部屋が通常より少し狭くなります。
小柄だった日本人にはちょうど良かったのかもしれませんが、物が多い現代には悩むところになるでしょう。
●湿気を帯びやすい
集合住宅には付き物ですが、団地の部屋は湿気がかなり多く、冬の窓の結露には目を見張るものがあります。
窓枠のゴムパッキンがこれでダメになることもあります。
また、押入れの湿気も通常の倍近くあります。
除湿剤は必須です。
●音漏れや近所付き合いが大変
団地での生活環境は小さな子供も多いですし、防音設定も施されていないため、隣上下階の生活音がうるさく、また、近所付き合いも少々面倒になります。
月一回の集会などがある場合もあります。
5階建ての団地が多いのでエレベーターもありません。
このような実情を踏まえて団地暮らしを考えなければ、住んでからでは対処しきれないことも出てくるでしょう。
団地暮らしのこんなとこがいい!!
昭和レトロや団地のイヤなところと、デメリットになり得ることをご紹介しましたが、団地には悪いとこばかりではありません。
また、人々が今団地を求めているのには理由があります。
では、なぜ団地が求められるのか。
今度は団地暮らしの良いところをご紹介しましょう。
●部屋数が多い
今では単身者用の団地もあるようですが、やはりマンションに比べると低価格設定で部屋数が圧倒的に多いのが魅力です。
●建物が安心
団地はUR賃貸や公営住宅がほとんどですが、民間の建物より耐震診断や耐震改修が進んでいるため、建物の安定感は安心できるものがあります。
また、退去時の原状回復費用の負担区分が明確にされているため、民間住宅ほどのトラブルは見受けられないところが魅力的でしょう。
●立地条件が整っている
広い敷地内で棟と棟の間隔を大きく取りゆったりと建てられています。
そのため、日当たりが良く、緑に囲まれた公園もたくさん設けられています。
また、大きな団地になると、敷地内に商店街やスーパー、クリニックや保育園といった施設が併設されているところもあります。
●細かい場所の技術力
団地の部屋は柱、窓や障子の枠、畳の縁が非常に綺麗に合わさっています。
何でもないように思われがちですが、これはハイレベルなデザインが施されているのです。
現代のように、狭い敷地にできるだけ多くの戸数を建てるような時代ではなく、ゆったりとした生活ができる空間が多いため、癒しを求める人がやってくるのです。
昭和レトロをもっと素敵な部屋へアレンジしてみよう!
団地の部屋をアレンジするという発想はあまりないかもしれません。
賃貸なので穴を開けたり壁を傷つけたりできないからです。
しかし、少し工夫するだけでもガラッと印象が変わるものです。
どのような工夫があるのかをご紹介しましょう。
●昭和レトロインテリアといえばカラフルなモチーフが主流
自分の大好きな色取りで家具と小物を揃えてみましょう。
このカラフルモチーフは当時のファッション業界からきたもので、現代でも愛されるデザインが多いのです。
●懐かしい木の柱や木の梁に合わせる
このような木の柱や木の梁は、長い時間が経ち、あめ色に変色をしています。
そこにあえてブラウン系の家具を持ってきて、昭和レトロ風のインテリアにすることもできます。
●ダイニングキッチンを再利用
台所と食堂をひとまとめにしたダイニングキッチンは団地から普及されました。
板の間が多いダイニングキッチンは表面の汚れを削ってしまえば再利用ができます。
お気に入りのラグマットを敷いたり、カラフルな食器で食卓を華やかにしてみるのも良いでしょう。
●フックやハンガーでオシャレに
両面テープやマスキングテープを使えば壁を傷つけることなくフックなんかも取り付けが可能です。
昭和レトロなフックやハンガーを吊るすと、何も掛かっていなくてもそれだけでオシャレな飾りにもなります。
今注目の団地リノベーション情報!
今、若い世代をもとに団地へ取り込もうと各地で団地リノベーションを施しています。
レトロ感に興味はない方も、マンションではなくあえて団地をリノベーションして住む利点をいくつかご紹介しましょう。
●夏場が涼しい
玄関、ベランダと両端に開口できる場所があるため夏場でも風が吹き抜け、エアコンがなくても予想以上に涼しい夏を過ごせます。
窓も多いので、日中はいつも明るい部屋で過ごすことができます。
また、トイレやお風呂にも窓が付いているので、換気も十分にできます。
●場所によっては、自分好みの部屋にできる
シンプルな住まいだから、自分の好みに合わせやすいのも特徴です。
風呂釜や湯沸かし器がないような団地も多いので、一から自分らしい部屋を作ることができます。
●収納スペースが豊富
押し入れや押入れ上部に収納スペースがあるので意外にものが置けます。
ふすまを取り払ってクローゼット風に変えると洋服もゆったりと収納することがで、解放することで湿気も気にならなくなります。
●ベランダが広い
ベランダが広いので、洗濯を干すスペースだけでなく、大切な人と団らんの一時を過ごすくつろぎスペースへと変えることができます。
先程お伝えしたように、風通しがよいので夏場の涼を取る空間としても活用できます。
色んな工夫がなされて、快適に団地暮らしができるよう各地で団地リノベーションをしています。
昭和レトロはちょっと・・という人も少し覗いてみてはいかがでしょうか。
不便と快適。どちらも心温まる生活へ
機能性として不便なとこはあるものの、全体的に昭和のものは温かさが伝わってきます。
それに憧れて、昭和レトロなもので部屋中のものを揃えるのも、癒しの一つとなるでしょう。
また、今では団地に母子家庭の方も増えていますが、一人親の家計にも優しい価格設定となっているのです。
こんな時代だからこそ、昭和レトロ満載の団地生活で癒されて、余裕のある暮らしをしていきたいものです。
今時のマンションライフは個人個人がまったく関わることがないため気持的には楽な一面もありますが、この忙しない今だからこそ、にぎやかでゆとりのある生活を送るのも良いのではないでしょうか。